[人間力向上プロジェクト]

DTMとか日常とか

『路地裏エクスプローラー』 ライナーノーツ②(歌詞解説+各曲コメント)

この記事を読む前に。

①を読んでもらった方がいいと思います。

 

uni-c.hatenablog.com


でも②(これ)読んでから①読んでもいいと思います。お好きな方で。

 

この記事では、歌詞で言おうとしてたことや、それぞれの曲を作りながら考えていたことを書きます。

 

 

アルバム全体について

lmn8cs.hatenablog.com

※ボーカルのchrさんが書いてくれた記事を併せて読むと分かりやすいです。

 

主に歌詞の話をすると、だいたいどの曲も

・街ってよく見ると面白いよね

・時間ってどうしようもなく流れるよね

この二点だけを言っています。実際、最近はこういうことばっかり考えてます。

 

地図とか街の様子とかを眺めるのが好きで、大学の研究でも仕事でも大体そんな感じのことをしてきています。

ブラタモリとかでもそうですけど、人が暮らしているところにはそれぞれ営みがあって、季節とか時間ごとに全然風景が変わってくる。そこが面白くて、音楽で表現しようと頑張ってます。

 

ただ同時に、(特にこのアルバムを作っていたころは)学生から社会人になるにあたって不安が多かった時期で、その不安も歌詞にできたらいいなあと思っていろいろ書きました。

あとは、先に社会人になった友人が口を揃えて「社会人になると友人が減る」と言うんですよね。

大学院を卒業する前後で会った人も、(なるべく会おうとしてもなお)二度と会えないかもしれないなあと思うことがあって、切なくなることが多かったです。

そういった時間の流れを実感する中で、この過渡期の感情を形として残したいというモチベーションが出てきて、こういった歌詞を書きました。

 

 

各曲紹介

01 Intro -the story of the steet-

(実はアルバムの裏にはthe story on the steetと書いてあります。正直どっちもアリだけど、ofをスタンダードとしておきます。申し訳ございません。)

7曲目のCATWALKの実質バージョン違いです。

 

当初、CATWALK自体をアルバム内で一押しにする予定はありませんでした。ただ、ジャケットのNagishiroさんにリファレンスとして聴いてもらったのがCATWALKとSepia Breezeだったのです。

結果、アルバムジャケの一番見やすいところに「CATWALK」と書いてあるし、バックインレイには猫が佇んでいました。

 

これは(もう一つの)メインに据えるしかない。

 

そう思って、CATWALKモチーフの静かな曲を、アルバムの始まりっぽくなるように、ピアノソロ+口笛でアレンジしました。

ピアノソロに関しては、後でミスタッチを修正した以外は一発録りです。すごくない?

 

02 路地裏エクスプローラ

押しも押されぬリード曲。

クラブ対応のボサノバが作りたい!!!!というところから生まれた曲です(①参照)。

路地裏エクスプローラーという題名と、アルバムのメインに据えることと、ボサノバにすることと、サビのメロディは決まっていて、2020年ごろにはすでにプロジェクトファイルがありました。その後、ことあるごとにメロディを思い出しては展開を頭の中で練ったりなどしていました。

Bメロでまくし立ててサビ前で止まって「だから僕は」に行く展開を思いついた時は、ニヤけが止まりませんでした。そういう曲が好きすぎ。

 

しかし、リズム隊が、何度強さを調整したり音色を調整したりしても満足の行く雰囲気にならず、めちゃくちゃ悩みました。ボサノバってよく分からないリズムのゆらぎがあったり独特のサステインがあったりして、それを全部再現するのってめっちゃくちゃ大変なんですよ…………

最終的にはSpliceのループ様様でした。DTMerみんなマジで活用しよう。

 

一方で、コード進行はサラッと決まりましたし、過去一で良い感じに組めたと思います。歌詞との噛み合いも綺麗なのが気に入ってます。

 

歌詞について。

「だから僕は 歩いてく」というサビの歌い出しは曲を作ろうと思った時点から決まっていて、それに合わせて他の歌詞を書いていきました。

「楽しくてキラキラしたものを探すぞ!」という期待と、迷子になったりする少しの不安の両面を詰め込んでいます。

 

ぜひ皆さんも、街を歩きながらこの曲を聴いてみてください。

 

03 Sepia Breeze

初出は『Twin ParadoX 6』(2020秋M3)。

完成してからもう1年半が経ちますが、1年半聴き続けても味が落ちない曲を作れたのは初めてです。

これも制作の経緯は①に書いてあるので省略します。スネアなしの4つ打ち+裏拍に色々鳴るというリズムは完全にElectro Swingの影響を受けています。それを踏まえてもう一回聴いてもらうと面白いかも。

間奏の音色はグロッケン+「アコーディオンをアンプに繋げた音」です。エモいよね~~~大好き。

 

初出verと比べると、ボーカルのミックスがちょっと変わっているのと、ギターの音色が変わっています。2番でギターが鳴るようになったのが一番わかりやすい変化ですね。

 

04 カレンダー

実は着想の大元は髭男のHELLO。

open.spotify.com

ラスサビにその名残があるかもしれない・・・?ぐらいです。

 

あとは私の作曲のバイブルである、塊魂のBGMにも影響を受けてます。

www.youtube.com

こっちは分かりやすいですね。

 

他にも参考にした曲は何曲かありますが、作っていくうちにだんだん方向性が変わっていき、自分が一番いいなあと思う形に落ち着きました。

個人的に一番気に入ってるのはラスサビのカウベルです。このくらいバカみたいな鳴らし方をする方が、カウベルの本領を発揮している感じがして好きですね。

 

歌詞については、最近会ってない人のことをふとしたきっかけで思い出して、「そういや元気にしてるかなあ」と思うようなあるあるを歌詞にしました。

最後の歌詞は書き上げてから投げやりすぎかなあとも思いましたが、最近喋ってない人に対する感情を最もリアルに表すと多分このくらいになる気がしてます。みなさんはどうでしょうか。

 

05 deskwork

このアルバムで(COLORSの原曲を除けば)一番古い曲です。2020年の6月だってさ。

楽器が増えるところの「フオォォォォン」というシンセの音色をずっと調整していたような気がします。

曲中の効果音は、効果音サイトを片っ端から聴き漁って「いいなあ」と思うものを選びました。あとは「summer vacation」(『pastel memories』収録)に使われていた効果音も少し混ざってます。

 

冷たい飲み物を飲みながら仕事や課題をまったり家でこなす昼下がりみたいなイメージです。憧れちゃうなあ~~~。

 

06 変わってく

今作の変化球枠。どのアルバムでも軸から少しはみだした曲を作りたくなっちゃうのですが、『路地裏エクスプローラー』ではこの曲がそれにあたると思います(前作では『find my feeling』)。

ハイテンポな渋谷系ドラムンベースの相性がすこぶる良いのは『大都会交響楽』から周知の事実ではありますが、

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前作のマインドだったらパキパキしたストロングなムンベにしてましたが、今作ではちゃんと渋谷系アルバムとして溶け込めるような音色にしています。これが成長ってやつだ。

それでも、ミックスに一番苦労したのはこの曲でした。キックとベースが大きいせいで聴感上の音量と実際の音量が全然合わんのよ・・・

 

個人的には、メロディも歌詞もBメロがめちゃくちゃ気に入っています。

子供の頃の「原風景」みたいなものって否が応でも移り変わってしまうもので、思い出の風景は、成長していく街なら大きな建物とかに置き換わるし、空洞化するなら駐車場とかになるんですよね。

(手続き考えたら公園がマンションに変わることはないだろ、という指摘はごもっともです)

 

この変化は時間が流れる限り仕方なくて、それはいつまでも学生では居られないっていうのと同じだと私は思っています。

ただ、それを切なかったり暗いものだと捉えるか、希望と捉えるか、そこに答えを出したくはなくて、この曲でも「人も街も変わってくという抗いようのない事実がある」ということだけを歌にしてます。

私たちの明日はどっちだ。

 

07 CATWALK

1曲目の解説で書きましたが、あれよあれよという間にこのアルバムのメインになっていた曲です。初出は2021年6月のぬこEP。

tsukubadtm.bandcamp.com

 

この頃から、誰にも言わないうちにアルバムを見据えた曲作りをしていました。

 

曲中で繰り返し流れているメロディを思いついた時に、これは曲にしていくしかないと思って数時間でひな形を作りました。

曲調は完全にFuture Bassです。それもめちゃ典型的なやつ。でもこういうの結局好きなんですよね・・・いつまでも作っちゃう。

個人的には1st dropが終わった後のブレイクが好きです。リードがディレイで反響するところ。

 

曲順に関しては、6曲目が夜なのに対して、この曲が夜明け~朝みたいなポジションになっています。どんな路地裏にも朝が来て人の営みがまた動き出すってことです。

 

08 COLORS(2022 Renewed)

 

2019年の春M3に出した「SEASONS EP」収録曲の別バージョン。ボーカルが代わったので、曲調も大幅にアレンジしています。

 

路地裏エクスプローラーの歌詞を書いている途中で、「この曲の歌詞で言ってること大体COLORSと同じだな?」ということに気付き、かねてからCOLORSは気に入っていたのでもう少し色々な人に聴いてほしいと思っていたこともあって、今回収録しました。

アルバムの流れ的にはCATWALKが最後の曲で、この曲はボーナストラックとして捉えてほしいのですが、一方でこの曲があるからこそ『路地裏エクスプローラー』が締まるような気がします。(chrさんはこれを「true end」と表現していました。正解。)

 

今バージョンの大きな変更点として、急に思いついてラップを入れてます。リリックを書くのは初めてだったのですが、個人的には思ったより上手く書けた(まとまった)という印象です。

ただ、それ以上に、chrさんがこんな無茶振りに対応してくれて有難かったですね。当然chrさんも(少なくともCDで)ラップやるのは初めてだったので、実力が完全に未知数だったのですが、思った通りの仕上がりになって感動しました。すごい。

 

それにしても、この曲をもう一回出せたことで、ようやく『山の手デイブレイク』以後の4年間が報われたような気がします。本当に良かったなあ。

 

最後に

M3の参加が3年ぶりになってしまい、皆様に忘れられてしまったんじゃないかと不安になりながら告知を出したのが昨日のことのように思い出されます。

それでも、多くの方に手に取って頂けたのは色々な方々のお陰です。

 

まず、大学の頃から6年間も在籍し、つい先日卒業したTsukuba DTM Lab.

ここのサークルにいたおかげで、色々なジャンルに対応できるようになりました。アルバム作れるほど手数が増えたのもここに在籍していたからこそだと思います。

 

そして、動画やおしながきなどのデザインのアドバイスに関わってくれたきなふぁさん、

 

2016年に初めて生声ボーカル曲を依頼してから、数々の無茶振りに応えてもらっているボーカルのchrさん、

 

そして何よりも、CDを手に取り、聴いてくださった皆々様のおかげです。

 

社会人になり、リリースペースを維持できるかは分かりませんが、可能な限り曲は出し続けますし、頃合いを見てCDも発売するつもりです。

 

その時まで、新曲を待ち続けて頂けたらと思います。

ではでは!